症例紹介

猫の心原性肺水腫

  • 呼吸困難
  • 呼吸数が増える
  • 心臓

 

こんにちは。獣医師の上田です。

今回は猫の心原性肺水腫について解説していきたいと思います。

 

 

<そもそも肺水腫って?>

肺水腫とは、血液中の液体成分(水分)が肺にある肺胞内に漏れ出てしまう病気です。通常、肺胞では二酸化炭素と酸素の交換が行われているので、液体が貯留してしまうことで呼吸困難になり、場合によっては命にかかわってくることもあります。

また、肺水腫は、心臓病が原因で起こる「心原性肺水腫」

その他の原因で起こる「非心原性肺水腫」に分けられます。

 

 

<原因>

心原性肺水腫の原因はその名の通り、心臓病です。猫ちゃんの心臓病では、心筋症が多く、肥大型や拡張型などいくつかのパターンに分かれます。(猫の心筋症については別記事にて解説)

心臓病が進行すると、心臓から血液を送り出す力が弱まり、血液の渋滞が起こります。

その結果、肺内の血液が心臓に戻りづらくなり、行き場を失った液体成分が肺胞内ににじみ出ることで肺水腫を発症します。

 

 

<症状>

症状としては、以下のようなものが代表的です。

 

・呼吸数が増える(特に睡眠時呼吸数)

・ワンちゃんのようにパンティング(開口呼吸)する

・舌や歯茎などが紫色っぽくなる

 

もしこのような症状がみられる場合には、すぐに病院にかかることをおすすめします。

また、原因となる心臓病は、聴診など身体検査ではわからないことが多いので、心臓病と診断されたことがなくても油断してはいけません。

 

 

<診断>

身体検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などの結果から総合的に判断していきます。

しかし、来院の時点でかなり状態が悪いことも多いため、出来る検査や大事な検査から実施し、心原性肺水腫の可能性が高いと判断した時点で治療を開始することも多いです。

 

 

<治療>

心原性肺水腫の場合、内科的に利尿薬を使用し、肺に溜まった水分を抜いていきます。また、酸素の吸入も大切な治療なので、酸素室や酸素マスクを使用します。

デメリットとしては利尿薬の副作用があげられます。

利尿薬は、腎臓に負担をかける薬のため、腎臓病に発展してしまうリスクがあります。

 

 

<まとめ>

今回は猫ちゃんの心臓病による肺水腫を解説しました。

もし、おうちの猫ちゃんの呼吸が苦しそうと感じた場合には、一刻を争う状態の可能性があるので、すぐに動物病院を受診してください。

また、今まで心臓病の診断を受けたことがない猫ちゃんでも、心臓超音波検査の実施により心臓病が見つかることもあるので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。

 

 

<実際の症例>

来院時の検査により、心原性肺水腫と診断、入院下で酸素吸入、利尿薬投与により治療した例です。

治療開始前(来院時)

 

治療開始から1日

 

治療開始から2日

 

治療開始から4日(退院時)

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