血液検査について
今回は血液検査についてご説明いたします。
健康診断や不調で来院した初診時に、体の中の状態を調べるために行います。症状を自分で説明できない動物は、検査で体の中で起きていることを調べることが人間と比べてより重要です。
血液検査には完全血球計算、血液化学検査の2種類に分類されます。完全血球計算では、全⾝を巡る⾎液から体全体の状態を調べる基礎的かつ重要な⾎液検査です。⾚⾎球や⽩⾎球の数を数えることで貧血や炎症、感染症の有無などを調べます。血液化学検査では臓器・器官系が、正常に動いているか、どこかに異常が⽣じていないかを調べる検査で、各臓器・器官系に関連する項目を測定し、複合的に判断いたします。
☆完全血球計算
- 赤血球:赤血球関連の数値は、貧血、脱水、赤血球増加症などを示す指標です。
- 白血球:主に免疫に関連し、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球と、5種類の血球を分類されます。
- 血小板:血小板は、出血性疾患などを示す指標です。血小板数が減少すると、出血が止まりにくくなります。
当院で使用している血球計算機
☆血液化学検査
①タンパク質:血液中のタンパク質は主にアルブミンとグロブリンに大別され、栄養状態などを反映します。
・総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)、グロブリン(Glob)
②肝酵素値:肝臓などに多く含まれる酵素を測定することで肝臓の障害を確認できます。
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)
④総ビリルビン(TBil):胆汁排泄異常や肝機能低下、溶血により上昇します。
⑤脂質:血液中の脂肪分の数値を測定し、栄養状態や食事内容などを反映します。
・総コレステロール(TCho)、トリグリセライド(TG)
⑥血糖値(グルコース・Glu):糖尿病や低血糖の診断に用います。食事の影響を受けるため、食後に上昇します。また興奮などのストレスやステロイドの影響により上昇する場合もあります。
⑦リパーゼ(Lip):主に膵臓にかかわる酵素を測定です。吐き気や食欲不振があり、この数値が高い場合は膵炎を疑います。
⑧腎臓:腎臓から排泄される代謝産物を測定し、腎機能が激しく低下すると上昇します。
SDMAはBUNやCREに比べ、より早期に腎疾患を発見できます。
・尿素窒素(BUN)・クレアチニン(Cre)、SDMA
⑨ミネラル:リン(P):副甲状腺疾患、腎臓病、食事内容などにより変動します
⑩カルシウム(Ca):骨代謝や筋肉の収縮、血液凝固などに関与します。主に腎臓や副甲状腺の疾患などで変動します。また、腫瘍で上昇する場合もあります。
⑪電解質:Na、K、Clは電解質と呼ばれ、細胞の浸透圧調節や体内の酸-塩基平衡(pH)調節、神経伝達など重要な機能を担っています。腎疾患、内分泌異常、脱水、嘔吐、下痢等様々な病態で変動します。
⑫C反応性タンパク質(CRP)・血清アミロイドA(SAA):どちらも体内の炎症に起因して上昇します。わんちゃんではCRP、ねこちゃんではSAAを測定しています。
生化学測定器
SAA、各種ホルモンなどの測定器
複数の要因で体調を崩していることもあるため、主症状以外にも基礎疾患がないかなど、症状や年齢に合わせて血液検査を実施しています。
またわんちゃん、ねこちゃん、うさぎさん、さらには犬種や猫種によってもかかりやすい疾患、上がりやすい数値などが異なります。
元気に見えても血液検査上の異常が認められたりする場合もあります。また健康なときの血液検査のデータがあると、体調を崩したときに、もともと数値が高いのか、病気で数値が高くなっているのかが判断しやすくなるため、年に1回は血液検査を含めた健康診断を実施しましょう。
担当獣医師 鈴木