ウサギさん症例集 No005 低体温と急性胃拡張
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今回は低体温と急性胃拡張のうさちゃん、宋ハッピーちゃんの体験談です。
急性胃拡張とはどんな病気?
胃の筋肉の痙攣や麻痺及び、胃液などの液体が胃内に貯留することによっておきます。貯留した液体からはガスが発生し、胃の拡張が加速します。胃炎、胃潰瘍、毛球や異物などの閉塞がおおもとの原因としてあげられます。
飼い主様より
2023年5月29日
我が家のおてんば娘、食べるのが大好きなハッピーが、突然何も食べなくなりました。普段は「ごはん」と「おやつ」の二つの単語に、ケージを食い破らんばかりの反応を示すハッピーが、この時は一瞬耳を立ててこちらをチラッと見るだけ。数日前からウンチが小さかったので、経験上、葛の葉をあげるとウンチが大きくなると思い、葛の葉をあげました。お腹を触ると、パンパンに張って、痛いのか触られるのを嫌がる様子。これは緊急事態!と、可愛動物病院に。引っ越した際ネットで調べ、「何かあったらうさぎの診療に注力している可愛動物病院に!」と決めていました。
獣医師より
検査をスタートしました。直腸温36.7℃で低体温(正常38~39℃)、レントゲンの検査の結果から急性胃拡張の可能性が高いことが分かりました。迅速な処置を必要とする病気です。
ICUでの保温、胃までカテーテルを入れて胃のガスを抜く胃の減圧処置、痛み止め、温かい輸液などすぐに行いました。
飼い主様より
診察の結果は、急性胃拡張と低体温のため即入院でまさかのICU(保温)入りでした。先生から「食べなくなってすぐに受診して良かったです。もしあと1~2日様子を見ていたら助からなかったかもしれません」と言われてびっくり。更に「体温が下がりはじめていて、安心できる状態ではないため、急変があり次第連絡します」と言われて茫然としながら帰宅しました。翌日の朝、恐れていた緊急の電話が。朝から体温が急激に下がって危ない状態ということでした。
獣医師より
5/30(火)
翌朝からは直腸温33.6℃となり生死にかかわる体温のためすぐに飼い主さんにご連絡しました。
飼い主様より
娘二人と病院に駆けつけると、先生のお話では手を尽くしているが体温が33℃台まで下がって、亡くなってもおかしくない状態とのことでした。「お家に連れ帰って最後を看取っていただくのがいいもしれません。病院での治療を続けることはできます。最善は尽くしますがもしかすると最後を看取っていただけないかもしれません、面会しながらでいいのでご家族で話し合ってください。」にわかには信じられないでいる私の横で娘は泣き出しました。先生に「家に連れ帰って体温が回復する可能性はありますか」と伺ったら「まずないです」とのことだったので「回復する可能性が少しでもあるならば引き続き病院で治療を」ということで意見が一致しました。
獣医師より
生死にかかわる状態の時には面会時間(15:30~19:30)以外にも当院では面会ができます。
飼い主様より
二人の娘とICUのケージに張り付いてハッピーに声をかけ、神様にお祈りしました。うさぎは病気や体調不良を隠す動物だと聞いてはいましたが「気づいてあげられなくてごめんね、苦しかったね」と涙ながらに語り掛けました。午後3時の診察の際、体温のさらなる低下が止まり、先生から「半歩前進です!」と言っていただけました。夕方の面会では先生から「朗報です、体温が33.6℃→35.4℃と更に上がってきました!」と嬉しいお知らせ。うずくまるだけのハッピーちゃんが時々ケージの中を動き回る姿も。
獣医師より
5/31(水)
水曜は当院の休診日でしたが、昨夜より体温が上昇し37℃、まだ便は出ていませんが触診で胃の著しい拡張が消え、山を越えてきていると思われました。
飼い主様より
6/1(木)
体温が37.8℃まで回復!便も出はじめ、野菜も食べ始めました。食欲が戻ってきました。一時は最後のお別れまで考えたことが嘘のような奇跡の復活!晴れて退院となりました。先生が「よく頑張りました!ハッピーちゃん、復活うさぎさんですね。ずっと声をかけてあげたのも大きかったと思いますよ。」とおっしゃってくださり、胸がいっぱいになりました。ハッピーを私たちの家族として大切に接してくださり、懸命の治療をして下さった可愛動物病院の鈴木先生、スタッフの方々、祈りを聞いて下さった神様に感謝でいっぱいです。本当にありがとうございました。
飼い主様からうさぎのご家族のみなさまへのメッセージ
私は以前うさぎを飼ったことがありましたが、自己判断で思いもよらない命の危機にさらしてしまわないよう、うさぎケア情報のアップデートが大切だと痛感しました。人間同様、うさぎの医療も日進月歩。元気なうちから病院の健康診断などで獣医師のお話や、待合室の掲示物や書籍、ネット検索でうさぎの健康について最新の情報に触れられたらいいですね。そして、うさぎの異変は、絶対に様子を見ずにすぐ病院へ!信頼できる病院を探す意味でも、元気なうちから複数の獣医さんを受診できたらいいと思います。そして、もう一つおすすめなのは早めのペット保険加入です。年齢を重ね体調に異変が生じてからは、ほぼ加入できません。「わが子同然だから、最善の治療を受けさせてあげたい」と思ったときに躊躇なく高度な医療も受けられるよう、早め保険加入がおすすめしたいです。